2017年01月

米田夕歌里『トロンプルイユの星』

トロンプルイユの星
米田 夕歌里
集英社
2011-02-25





第36回すばる文学賞受賞作品。タイトルの「トロンプルイユ」とは、”眼だまし”の意味があり、描かれたものが現実にそこに実在するかのような錯覚をあたえる絵画的表現(シュルレアリスムの手法)らしい。「だます/だまされる」という言葉を聞くと、(ミステリー好きとしては)まずは大掛かりな叙述トリック的なものを想像してしまうのだが、この物語で描かれるものはちょっと違う。いわば、私たちが日常的に出会うもの、今日も明日もそこにある居続けるであろうものの不安定感というか。たとえば、間違いなくこの棚の中に入っていたはずのコーヒーカップが見当たらない。カップどころか、コーヒー豆すらもない。移動させた記憶がないのに、いつの間にか消えている。昨日まで職場にいたはずの人物が消えており、さも当たり前のように別の人物が(まるで自分にとって長年付き合ってきた人のように)同じ席についている。そのような錯覚か、幻覚かと思われるような辻褄の合わない喪失や入れ替わりが何度も続いたときに、「あー、ちょっと疲れてるんだな、自分」と、ただの勘違いで納得できるのか。それとも、自分もしくは他者のいずれかが狂っているか、精神疾患にでもなってしまっていると自覚しようとすることを落としどころにするか。要はそうした実在性を揺るがすようなシンボリックなズレ、また、そうしたズレに連続して直面したときの動揺した人間像、あるいは人間模様を、この物語は描いている。かなり難しいテーマを扱っているのだが、入りとしては恋愛小説のようでもあり、ビジネス要素のある成長物語のようでもあり、ふんふん、結構スラスラと読んでいけるなーなどと考えいると、上記のような”だまし絵”に主人公共々見事にやられてしまうのである。とても斬新な物語だった。この作品以降、同作者は本を出版していないようなのだが、他の作品を出したときには是非手に取ってみたい。

半熟卵で幸せ気分になるには

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卵料理全般がめちゃめちゃ好きというわけではないのですが、半熟卵がとにかく好きです。ゆで卵といえば、もちろん半熟だし、朝食の目玉焼きも半熟ではないと納得しない(1日はこのとろみから始まる的な)。2年くらい前だったか、いかにして半熟ゆで卵を効率的かつ美味しく作るか試行錯誤した結果、「レンジでらくちん!ゆでたまちゃん!」だったか?そんな名前の器具を衝動買いしたこともありました。ゆでたまちゃん(仮)・・・名前は可愛いのですが、レンジの調子と時間によってはすぐに固ゆでオヤジになってしまうし、殻のまま投入するのでいつか爆発するんじゃないかとソワソワし、なかなか信用がおけず、安心もできず。今は棚の奥の方で眠っております。さて、そんな半熟卵好きのおれですが、つい最近、思わぬことに気づいてしまいました。「まてよ、ニワトリの卵が半熟にできるんだったら、ウズラの卵も半熟にできるんじゃないか?」ということに。あんなに小さな半熟たまごを量産できれば、おやつ代わりに食べることもできる。素晴らしいことです。ってなわけで、ネットで調べてみたら、なんだよ、レシピたくさんあるじゃない。そこで同じく半熟卵好きな友人に情報提供した後、半熟うずらの卵入り八宝菜を作ってみました。みたのですが・・・ううむ、これは何か微妙。ミニ半熟卵を作って食べてみてわかったのですが、どうやら自分的には半熟卵の大きさってのも結構重要なようでして。幸せ気分になるためには、それなりの大きさが必要なことがわかりました。めっ、面倒くさい。

高井尚之『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』



ビジネス関係の本は、気になったとしても手に取るくらいで、買って読むことはほとんどないのだが、この本はすぐに購入、一気読みしてしまった。だって、コメダだからね。好きなんです、コメダ。加えて、タイトルを見て、確かにそう思う。「なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?」。大学時代に名古屋で時々利用していたときには、それほど人気店という印象はなく、初めて入店したときなどは、ちょっとお金持ってそうなマダムたちが井戸端会議に使ってそうな店、コーヒーでのんびりというよりは軽食でお腹が膨らむ店というイメージしかなかったのだが、今や老若男女どこもかしこも、コメダ、コメダ。かなり郊外にある地元の店舗のモーニングですら混んでいる。確かに、居心地は良くて、コーヒーや軽食も美味しいとは思うのだが、なぜこんなにも人気なのだろう、と常々思っていた。と、そんなときに、この本の表紙のタイトルと美味しそうなシロノワールが視界に入ったものだから、それはもう購入せざるを得ないわけだ。内容は5章の章立てになっており、コメダが人気急上昇の理由についての「なぜ?」を40項目ほどで回答していく形式となっている(たとえば、「なぜ、コメダは”お客の滞在時間”が長くても儲かるのか?」「なぜ、コメダには”舌をかみそうなメニューがない”のか?」など)。インタビューやデータを元に実証的な内容が綴られていて納得させられるし、何よりもフルカラーで至るところにコーヒーや軽食のメニューの写真が掲載されているため、パラパラと読み流しているだけでも楽しい。なぜコロッケやジャーマンのキャベツが”爆盛り”なのか?という質問も取り上げられており、名古屋に住んでいた頃から引っ掛っていた謎が一つ解けてスッキリ。個人的にはまだまだ謎が深いコメダだが、この本を読んでだいぶ理解が深まったように思う。そして、それ以上にお腹が空くのであった。

新年

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あけましたね。皆さま、本年もよろしくお願いいたします。
今年は酉年とのこと。酉年の鳥は「ニワトリ」なのだそうで。一瞬、ニワトリかよー、なんて思うのですが、古来よりニワトリは「文、武、勇、仁、信」の五徳を具える有益な家畜と見なされてきたのだとか。ふむふむ。まあ、その五徳を心に留めつつ、トサカにきたり、有頂天になったりせず、地道に歩いていこうと思います。

さて、早くも3日です。あっという間に正月、終わりです。年末から実家でのんびり過ごしています。
ニュースを観ていると、「今回の紅白はグダグダであった」とえらく叩かれていますが、個人的な印象としては、それは今に始まったことではなく、相当前から感じていたことではあります。毎年、一応観るは観るのですが、その都度舞台に出てくる人数が多すぎて、一体、誰が誰やら、誰が歌ってるのやら、さっぱりわからないことがあるのですよね。今年に関しては言えば、内容そのものより、もう結構な齢であるうちの親父が新垣結衣の恋ダンスを「まだか、まだなのか」と期待していて、かなり気持ち悪かった印象が強いです。残念な結果に終わったので、翌朝(正月なのに)憔悴しきったような顔つきで部屋から出てきました。まぁまぁ、親父、とりあえず、このお雑煮を食べなさないよ。そして、おめでとう。

というかんじで、今年もよろしくお願いします。
あ、ちなみに、写真は実家近くから撮った富士山です。ここ数日は天候が良いこともあり、ばっちり綺麗に撮れました。イイ顔してます。
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