昨日のゼミでの話題のなかでちょっとだけ登場したので。
ご参考までに。
● 現在、インターネットなどの技術革新によって普及してきたブログ(※)を社内コミュニケーションの一端として活用していこうという動きが各企業において見られる。
※ ブログ・・・本来の名称はウェブログ。個人や数人のグループによって運営され、日々、定期的に更新されていく日記的なwebサイトの総称。内容としては時事ニュースや専門的なトピックスに対して自分の意見を表明したり、他者からのコメントなどを通じて議論を行う形式が多く、従来的な単なる日記サイトとは区別されることが多い。
■社内ブログの主要な利用方法
(1)既存の情報共有ツールの補完。
⇒定型化されやすく時間的に制約されやすい情報ツールと使い分けしながらも相互補完的役割を果たす。(Push型情報共有⇔Pull型情報共有)
(2)個人の枠内に留まりがちな情報の積極的発信
⇒個人がweb上の情報発信のための“パーソナルスペース”を獲得することに関連
つまりグループウェアや掲示板などの“公共の場”で発言するというよりもオープンかつリラックスした心理状態でコミュニケーションを行うことが可能になる。
(3)ナレッジの発信、共有、蓄積
⇒些細な情報も埋もれさせない。ニュース、アイデア、日報、自己PR・成功体験、失敗体験、プロジェクトの進捗、会議の議事録、悩み、雑感・日常的な出来事、ファイル・・・などなどをカテゴリー化、インデックス化して提示することが可能。
■社内ブログの利点
(1) 社員間(上司と部下を含む)、部署間におけるアイデア交換などを通じた積極的コミュニケーションを時間などに囚われることなく比較的簡易に行うことができる。
(⇒トップダウン型、ボトムアップ型、業務組み込み型、プロジェクト型)
(2) 低コストで導入可能な情報共有システム。規模にもよるが、必要最低限の機能のみで小規模に立ち上げた場合、数十万程度の予算で済んだという事例も見られる。
(3) あるメモ書き程度に掲載されたもの(非定型な情報)が、多数のコメント、数日間にわたる差延的かつ双方向的議論の結果、極めて発展的なアイデアへと繋がることもある。
(4) 上記のような非定型な情報が重視されることによって、ハインリッヒの法則「1件の失敗が起こる背景には、小さな未遂が29件あり、潜在的な問題が300件ある」のうちの潜在的な問題をプロセスを辿って追究することが可能になる。(⇒特定の情報のコンテクストとなるプロセスの可視化)
■問題点
(1) 利用目的(社内ブログを利用する意図や内容)あるいは導入範囲(何人くらいのユーザーを戦略的射程に置いているか)を明確にしないまま、導入してしまった場合、社員にその“必要性”や理解が浸透しない場合がある。結果としてコミュニケーションそのものが活性化しない。つまりユーザーを説得させる前提項が必要となる。(⇒コンセプトの明確化)
(2) 大量の情報がさばけない、頻繁に更新していくにあたっての時間的余裕がない、ツールが使いづらい・・・などの諸問題。
(⇒最低限のルール、マナー、使い方を盛り込んだガイドラインの必要性。ブログを書く=業務という認識を浸透させる)
(3) 直接的コミュニケーションの減少や軽視。いかにしてブログでのコミュニケーションはフェイス・トゥ・フェイス・コミュニケーションと相補的な形に位置づけるかが重要になってくる。
■社会ブログツールの種類
・ASP版
ドリコムのサーバとレンタルソフトウェアで行う小規模向けサービス。
ネット環境さえあればサーバの準備やインストール作業を行わなくても利用可能。
初期費用も数万円と低価格。通信環境はSSLに対応、IP制限もかけられる。
⇒少人数、システム管理者がいない場合などに利用するのが便利
・アプライアンスモデル
アプリケーション、OS、ハードウェなどがオールインワンパッケージされている中~大規模向けサービス。企業でサーバ管理することになるものの、導入、運用、管理やソフトウェアのアップデートなどを比較的簡易に行うことができるために、時間的、費用的負担が少ない。
⇒中規模以上(50人以上)での利用を考えている場合。
・パッケージ版
中~大規模向けのサーバインストール型サービス。自社内のサーバ内での運用となるため、ルールやセキュリティポリシーなどは社内規定に拠る。セキュリティ規定などによりASPを社内で利用することが困難な場合や機能のカスタマイズを行う場合などに適している。
⇒中規模から大規模(100人以上)での利用を考えている場合。
ほか、with ConceptBaseやエンタープライズ版など。
■使用に関する具体例
(1)株式会社野村総合研究所(NRI)
2005年6月より内定者限定の社内ブログを導入。
過去のユーザー数は2005年が220名、2006年が300名、管理者数は5名。
利点・・・内定者同士、および内定者と既存社員との早期の社内コミュニケーションを通じて早期からの企業理念や情報共有を行うことができる。
問題点・・・入社を決めかねている内定者のコメントなどマイナス要素を伴う可能性がある。あるいは情報流出への懸念。諸々のリスクへの対処が必要。
(2)富士火災海上保険株式会社
各営業拠点に1~2名在籍している代理店指導・育成を目的とした営業担当の女性社員(エージェントインストラクター 以下AI)に限定した社内ブログを導入。2007年現在、使用規模は書き手が16~17名程度、閲覧対象は200名(AIのほぼ全員)。ブログの更新時間(9:00~17:00)を設定して社内ブログ=業務という構図を強く意識づけしている。
利点・・・営業拠点が離れた女性社員による積極的なコミュニケーションや情報共有を通じての業務レベルの向上。質の高い情報の共有とそのプロセス(成功談、失敗談を含む)の可視化。
問題点・・・定着化はなされてきたが機能の利用が限定されている。トラックバックを含む多様な機能をどのように使用していくかなどの具体的展望が必要。
・ユニクロの社内ブログ戦略
ブログツールである「Movable Type」をベースにした社内情報ウェブの構築によって各店頭で見られるお客さんの反応をブログを通じて即座に収集・整理できるような環境を整える。
⇒これまでユニクロはカジュアル衣料品に特化した製造小売の強みを生かすためにユニセックスの商品を中心に展開していた。しかし、本部が「スカートの販売についてどう思うか」というエントリーを書き込んだところ、これを読んだ各店舗のスタッフが次々に前向きなコメントを残していった。こうした意見をふまえ、ユニクロは2006年6月から全店でスカートの販売をはじめた。
参考文献は主として『社内ブログ革命』と『社内ブログ導入・運用ガイド』の二冊です。僕もドリコムさんにはいつもお世話になっています。
ご参考までに。
● 現在、インターネットなどの技術革新によって普及してきたブログ(※)を社内コミュニケーションの一端として活用していこうという動きが各企業において見られる。
※ ブログ・・・本来の名称はウェブログ。個人や数人のグループによって運営され、日々、定期的に更新されていく日記的なwebサイトの総称。内容としては時事ニュースや専門的なトピックスに対して自分の意見を表明したり、他者からのコメントなどを通じて議論を行う形式が多く、従来的な単なる日記サイトとは区別されることが多い。
■社内ブログの主要な利用方法
(1)既存の情報共有ツールの補完。
⇒定型化されやすく時間的に制約されやすい情報ツールと使い分けしながらも相互補完的役割を果たす。(Push型情報共有⇔Pull型情報共有)
(2)個人の枠内に留まりがちな情報の積極的発信
⇒個人がweb上の情報発信のための“パーソナルスペース”を獲得することに関連
つまりグループウェアや掲示板などの“公共の場”で発言するというよりもオープンかつリラックスした心理状態でコミュニケーションを行うことが可能になる。
(3)ナレッジの発信、共有、蓄積
⇒些細な情報も埋もれさせない。ニュース、アイデア、日報、自己PR・成功体験、失敗体験、プロジェクトの進捗、会議の議事録、悩み、雑感・日常的な出来事、ファイル・・・などなどをカテゴリー化、インデックス化して提示することが可能。
■社内ブログの利点
(1) 社員間(上司と部下を含む)、部署間におけるアイデア交換などを通じた積極的コミュニケーションを時間などに囚われることなく比較的簡易に行うことができる。
(⇒トップダウン型、ボトムアップ型、業務組み込み型、プロジェクト型)
(2) 低コストで導入可能な情報共有システム。規模にもよるが、必要最低限の機能のみで小規模に立ち上げた場合、数十万程度の予算で済んだという事例も見られる。
(3) あるメモ書き程度に掲載されたもの(非定型な情報)が、多数のコメント、数日間にわたる差延的かつ双方向的議論の結果、極めて発展的なアイデアへと繋がることもある。
(4) 上記のような非定型な情報が重視されることによって、ハインリッヒの法則「1件の失敗が起こる背景には、小さな未遂が29件あり、潜在的な問題が300件ある」のうちの潜在的な問題をプロセスを辿って追究することが可能になる。(⇒特定の情報のコンテクストとなるプロセスの可視化)
■問題点
(1) 利用目的(社内ブログを利用する意図や内容)あるいは導入範囲(何人くらいのユーザーを戦略的射程に置いているか)を明確にしないまま、導入してしまった場合、社員にその“必要性”や理解が浸透しない場合がある。結果としてコミュニケーションそのものが活性化しない。つまりユーザーを説得させる前提項が必要となる。(⇒コンセプトの明確化)
(2) 大量の情報がさばけない、頻繁に更新していくにあたっての時間的余裕がない、ツールが使いづらい・・・などの諸問題。
(⇒最低限のルール、マナー、使い方を盛り込んだガイドラインの必要性。ブログを書く=業務という認識を浸透させる)
(3) 直接的コミュニケーションの減少や軽視。いかにしてブログでのコミュニケーションはフェイス・トゥ・フェイス・コミュニケーションと相補的な形に位置づけるかが重要になってくる。
■社会ブログツールの種類
・ASP版
ドリコムのサーバとレンタルソフトウェアで行う小規模向けサービス。
ネット環境さえあればサーバの準備やインストール作業を行わなくても利用可能。
初期費用も数万円と低価格。通信環境はSSLに対応、IP制限もかけられる。
⇒少人数、システム管理者がいない場合などに利用するのが便利
・アプライアンスモデル
アプリケーション、OS、ハードウェなどがオールインワンパッケージされている中~大規模向けサービス。企業でサーバ管理することになるものの、導入、運用、管理やソフトウェアのアップデートなどを比較的簡易に行うことができるために、時間的、費用的負担が少ない。
⇒中規模以上(50人以上)での利用を考えている場合。
・パッケージ版
中~大規模向けのサーバインストール型サービス。自社内のサーバ内での運用となるため、ルールやセキュリティポリシーなどは社内規定に拠る。セキュリティ規定などによりASPを社内で利用することが困難な場合や機能のカスタマイズを行う場合などに適している。
⇒中規模から大規模(100人以上)での利用を考えている場合。
ほか、with ConceptBaseやエンタープライズ版など。
■使用に関する具体例
(1)株式会社野村総合研究所(NRI)
2005年6月より内定者限定の社内ブログを導入。
過去のユーザー数は2005年が220名、2006年が300名、管理者数は5名。
利点・・・内定者同士、および内定者と既存社員との早期の社内コミュニケーションを通じて早期からの企業理念や情報共有を行うことができる。
問題点・・・入社を決めかねている内定者のコメントなどマイナス要素を伴う可能性がある。あるいは情報流出への懸念。諸々のリスクへの対処が必要。
(2)富士火災海上保険株式会社
各営業拠点に1~2名在籍している代理店指導・育成を目的とした営業担当の女性社員(エージェントインストラクター 以下AI)に限定した社内ブログを導入。2007年現在、使用規模は書き手が16~17名程度、閲覧対象は200名(AIのほぼ全員)。ブログの更新時間(9:00~17:00)を設定して社内ブログ=業務という構図を強く意識づけしている。
利点・・・営業拠点が離れた女性社員による積極的なコミュニケーションや情報共有を通じての業務レベルの向上。質の高い情報の共有とそのプロセス(成功談、失敗談を含む)の可視化。
問題点・・・定着化はなされてきたが機能の利用が限定されている。トラックバックを含む多様な機能をどのように使用していくかなどの具体的展望が必要。
・ユニクロの社内ブログ戦略
ブログツールである「Movable Type」をベースにした社内情報ウェブの構築によって各店頭で見られるお客さんの反応をブログを通じて即座に収集・整理できるような環境を整える。
⇒これまでユニクロはカジュアル衣料品に特化した製造小売の強みを生かすためにユニセックスの商品を中心に展開していた。しかし、本部が「スカートの販売についてどう思うか」というエントリーを書き込んだところ、これを読んだ各店舗のスタッフが次々に前向きなコメントを残していった。こうした意見をふまえ、ユニクロは2006年6月から全店でスカートの販売をはじめた。
参考文献は主として『社内ブログ革命』と『社内ブログ導入・運用ガイド』の二冊です。僕もドリコムさんにはいつもお世話になっています。